税理士と弁護士・公認会計士の業際問題

一般市民のみなさんにとっては、どうでもいい話ですが、

日本税理士会連合会(日税連)が平成25年度税制改正要望で、弁護士、公認会計士に対し、従来の自動資格取得制度に制限を掛けようとしています。最近の政府税制調査会の場でもしきりに懇願しているようです。

 

改正内容は、弁護士、公認会計士に追加的に税理士科目の試験合格義務を課すというもので(当然、表立っては言いませんが)、税理士業界への参入を阻止しようとするのが趣旨です。

(現在は、登録要件を満たせば、書類と登録料・入会金等の資金さえ納めれば税理士の資格が自動付与されます。)

 

背景には、この10数年来弁護士、公認会計士を政策的に増やし過ぎたという現状があります。

そもそもは、弁護士も公認会計士も「将来の人員不足」を補填するための増員策でしたが、政府が需要予測を完全に誤ったため、これらの資格者が”あぶれ”てしまいました。

 

翻って、税理士はというと・・・、実は税理士の数も増えています。

平均寿命の伸びによる現役年数の長期化もあるでしょうが、実はこの他資格からの参入者が多く、近年増加傾向にあるようです。

 

一方、長引く不況の元、企業数は減る一方というトレンドです。

さらに輪をかけて、税理士紹介業という「問屋」のような中間搾取業者が数多く出現したため、税理士報酬が異様に低くなったという状況があります

「クライアント減」「報酬減」「ライバル増」という三重苦が今の税理士業界の現状です。(え?知らなかったって?)

 

そこで、税務実務をよく知らない弁護士(他の分野で絶対的な能力がありますので、ここは不足しててもよいと思います)と近年急増した実務経験の足りない公認会計士の税理士業界流入に歯止めをかけようというのが日税連の考えていることです。

 一旦”税理士”とついてしまえば、一般の方からは違いはわかりませんからね。

 

とにかく日税連は税理士のテリトリーを守るのに、必死です。異様な執念が垣間見えます。

会計士協会側のスタンスは、今までも広く国民のためにやって来たし、今頃試験を課すなんてことしなくても十分やっていける。業際問題を主張すること自体おかしい、なんてまさしく尖閣諸島みたいな展開になっています。

ハタから見ていると醜い争いです、ホント。

 

そんなこんなな状況なので、元が公認会計士の私は税理士業界ではとーっても息苦しい思いで居ます。

支部の会合やらのご案内が頻繁に来たりもしますが、どの税理士が敵対心を持っているかわからない(というより全員日税連寄りに見えてしまうかもしれない)、等と疑心暗鬼になるのもイヤなので、税理士の集まりには当面参加しない方が無難かなー、と思っています。

 

理士だろうと、公認会計士だろうと、弁護士だろうと、まともな「税理士」さんが最終的に選ばれてしかるべきだし、そうした淘汰がなかったから「ぬるま湯」等と称される業界体質になったのではないでしょうか?

税理士試験を通った人だけで”楽園”を作るという発想は内向きで、時代錯誤ですよね。

試験科目にない、サービス業としての在り方の部分が本当は一番重要なはずです。ここがダメなら試験受かった税理士でもレッドカードだと思います。

 

ニセ税理士はさすがに問題ですが、資格を与えて後は自由に競争させればいいんじゃない?というのが私の考えです。

取り締まるべきは、国家資格者を商品にする税理士紹介会社ニセ税理士ですよ。

税理士紹介会社はできるなら直ちに法律で禁止すべきですよ。弁護士業界のように。

 

というわけで、つまらん業際問題ではなく、一般の人にとって、もっとまともな税制になるような方向に改正要望のエネルギーや時間を配分した方がいいと思うんですが、如何でしょうか。

もっとも、まともな税制が実現しても、使い方がまともじゃないので片手落ちなんですけどね。